私たちの“それぞれを そのままに – as it is -”
都市の不本意な食生活を豊かにし、地方経済を造る
vol.5 株式会社アグリゲート 代表左今克憲さん
産地と消費者をつなぐ都市型八百屋「旬八青果店」を2009年に創業し、青果販売事業、地域特産品のPRやコンサルティングを行う地域活性事業、「旬八大学」における食農業界の人材育成事業、さまざまな領域で事業展開をし続ける㈱アグリゲート代表左今さんの“as it is”
さかのぼること旬八青果店創業以前、学生時代に僕がバイクで日本全国を回る旅をしているときに、地方と東京を比べると食に対するギャップを感じる経験をしたのです。東京は美味しいお店はたくさんあるけれど、そのようなお店は料金が高く、また素材もあまり良くない。一方地方では、素材が良くてもそれらを活かせていないと感じたのです。さらに、地方で食材が余っていたりする状況を目の当たりにし、単純に食材が流通されていないという事態も知りました。そのような経験がきっかけとなり、旬八青果店を創業させたのです。旬八青果店があることで都市生活の中でも良い食材と情報が手に入る。というより良いインフラづくりを目指しています。
生産から販売を一気通貫で担う新たなビジネスモデル
私たちが展開する事業は大きく分けると「SPF事業」と「プラットフォーム」型事業があります。SPF(Speciality store retailer of Private label Food)というのは、食の業界で、生産から流通・販売(消費)までを一気通貫させたビジネスモデルです。SPFの中に「旬八青果店」があります。
そもそもなぜ青果のSPF事業を始めたかというと、食品小売業の低収益・低所得を高収益にして働く人の給与が上がるように変えていきたいと思っています。さらに、持続的に高収益になるような仕組みで、展開を増やしていきたいと考えています。ただし、スーパーやコンビニと比較すると青果店が取扱う商品数は少なく、店頭に並べられる商品に限りがあります。それらの小売店とは異なる店舗づくりをして、お客様のニーズを捉えて、お客様にどう受け入れられるのか。また、利益ばかりを追求するのではなく、店頭に並ぶ商品を頻繁に入れ替え、地域の人たちに毎日通ってもらえる店づくりを心掛けています。とくにこの一年は仕入れと販売に注力をしており、青果以外の肉や魚などのアイテムは信頼できる漁協や産地から仕入れるなどして、取り扱う商品のバラエティを増やしていくなどして、地域のお客様に信頼される店づくりを実践しています。
食材を「売る」のではなく、食卓を提案する
旬八は食材を売るという役割の他、「食卓の提案」をしていきたいと思っています。なぜなら、素材(食材)が良くてもレシピを知らないと美味しく食べられなかったりするので、美味しく食べるための方法なども店頭では情報をお伝えするようにしています。
最近で言えば、広島にある農薬を使っていない田邊農園さんからは、産地から直接送ってもらっておりますが、春菊やルッコラなど葉物野菜全てえぐみが無くてとてもおいしいですよ。サラダや鍋で食べると田辺農園さんの素材の良さをより感じて楽しめます。春菊であれば、塩とオリーブオイルをかけて食べるだけでも美味しいですし、鍋の時もサッと入れる程度でシャキシャキした状態で食べると素材そのものの良さを感じられ、おいしく食べられます。
本当の意味での地域に根差したお店づくりとは
青果の品ぞろえ以外にも総菜や加工食品の取扱いもしています。また、現在は緊急事態宣言などでお店を閉めたりしている飲食店の支援として、お店の料理を総菜として旬八が詰めて販売するプロセスを新たに開始しています。また、わたしたちは小売として青果販売をしているので基本的に卸はしていませんが、店舗周辺のレストランなどの飲食店に10%オフカードを配布して、当店で安く購入していただくサービスもしています。このようにこれからも私たちは、半径1km圏内の関係している全ての人たちに向けて、サービスを提供していきたいと思っています。
“おいしい”を伝えるために
地方と都市をつなぐ八百屋(メディア)として都内中心に店舗を展開していますが、青果・肉・魚などの商品の情報やその商品がもっているストーリーから“おいしい”を伝えられる“場”にしたいと思っています。お客様が毎日その店に行けば、商品にストーリーがあって楽しい。という在り方でいたいです。
“新鮮・おいしい・適正価格”
全国各地の売り残りや、廃棄されていた規格外の青果を仕入れ、お値打ち価格で販売する。という従来の青果店のような販売もしていますが、私たちが商品を仕入れて販売するときに大切にしていることは“新鮮・おいしい・適正価格”である、ということです。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、たとえば“新鮮”というのは、単に商品が新しい、という意味だけではなく、商品が食べごろの状態で提供できることを意味しています。また、“おいしい”というのも、果物であれば甘いのがおいしい。ということだけでなく、食材にしっかりと特徴があることです。さらに“適正価格“で言うと、その商品そのものの価値をその金額を払っても満足してもらえるか。ということに加えて、仕入れた金額で仕入れ先が成り立っていくのか。ということを意識して商品値付けをしている商品こそが適正価格であると考えています。
未来に“おいしい”をつなぐインフラの創造
社会環境が目まぐるしく変わっていく中で、壮大な消費地と産地の課題を解決していくために、これまでのインフラでは賄いきれない部分が出てきていると思っています。インフラの創造とは、これからの社会構造の変化に対応しうる新しい機能を今までの先人が築いた土台へと重ね、SPF(製造・流通・小売業)サービスにおいて、リソースを活用しながら新しい仕組みを創っていきたいと考えています。「都市の不本意な食生活を豊かにし、地方経済を造る」ということを、わたしたち旬八を通じて実現していきたいと思っています。
ー A story about coffee ー
おなかが緩くなるのでコーヒーは多く飲まないようにしていますが、飲んじゃいます(笑)。
コーヒーは好きだけどブラックは体質的に合わないので、またラテほどミルクを入れると今度は重く感じるので、ほんの少しミルクを入れて飲んでいます。
ゆっくりと過ごせる時間ができた時には、自分がおいしいと感じるものを飲みます。眠気を覚ましたい時にはセブンイレブンやスターバックスなども利用しています。
株式会社アグリゲート 代表取締役CEO 左今克憲さん
1982年生まれ、東京農工大学農学部卒業。大学卒業後、アグリベンチャーを起業するため、必要な知識経験を積むため総合人材サービスの株式会社インテリジェンス(現パーソル)に入社。その後、2009年2月にアグリゲートを個人事業として創業し(2010年1月から株式会社化)。当初は農業生産法人の社長の付き人など業界慣行や業界動向などをキャッチアップし、2013年10月からアグリゲートの事業経営を本格化し、現在に至る。