連載企画 “Coffee as it is”
vol.1 宮坂 勝彦さん

連載企画 “Coffee as it is”
vol.1 宮坂 勝彦さん

私たちの“それぞれをそのままに-as it is-”

原点を知り、未来を創造する

Vol.1 宮坂醸造株式会社 社長室 室長 宮坂 勝彦さん

信州諏訪の地で1662年に創業した老舗酒蔵、宮坂醸造。1946年には同社諏訪蔵から優良清酒酵母「七号酵母」が発見された。真澄酵母とも呼ばれるこの酵母は、瞬く間に全国の酒蔵で採用され、近代清酒の礎を築いたとされている。発見から半世紀の時が流れた2019年、同社は七号酵母への原点回帰へと大きく舵を切った。350年以上の歴史ある酒蔵の革新に取り組む宮坂さんの“as it is”

日本酒は地域の鏡

日本酒とは地域の産物である米や水、風土や人を映し出す鏡のようなものです。単に美味しいという要素を超え、一杯の酒から土地が持つ歴史や文化、自然や人の暮らしといった物語を感じてもらう酒をつくることが、私たち酒蔵の仕事だと思っています。そうした意味でも、地域について学ぶこと、地域について考え、未来のためにアクションをすることは酒造りの一部であると考えています。

僕にとっての“らしさ(as it is)” は、夢

仕事と夢の境界線がなくなった

夢に向かって生きている時に、“as it is=らしさ“を感じます。

生活のためお金を稼ぐのは「稼ぎ」で、夢や想いを叶えるために取り組むのが「仕事」だとある人から聞いたことがあります。この言葉は真を突いていると思っていて、夢や信念を持って取り組む人たちは“as it is”を日々の仕事や暮らしを通じて体現していると思います。

オンとオフの間に境目はなく、インプットとアウトプットにも境目がありません。大好きなコーヒーや音楽、デザインやアートに触れることで、そこで感じたインスピレーションを酒造りに活かすことが出来ますし、仕事を通じて素晴らしい方々にお会いする中で自分の人生が豊かでああることを実感します。自分が今夢見ていることも、多くの人との出会いや対話を通じて育まれてきたもので、突然閃いたものではありません。

水は澱めば汚れていく

30代を超えて自分の中で趣味や嗜好、人付き合いが固定化してきていることを感じ危機感を感じています。こだわりや信念といった言葉で取り繕えば綺麗事に聞こえるかもしれませんが、新しい情報や時代の変化を感じるきっかけを自ら遮断してしまうことにも繋がりかねません。諏訪湖や酒造りといった場面で水を見ながら感じるのは、「水は澱めば汚れていく」ということ。澱みをつくらないためには、常に流れを持つということです。溜め込まず流れをつくりだすことで新しいものがまた流れてくる。この感覚を常に意識したいと思います。

軸を持つ

座右の銘は「自反而縮雖千萬人吾往矣(みずからかえりみてなおくんば、せんまんにんといえどもわれゆかむ)」という出身高校の校訓です。古代中国の思想家孟子の言葉で「自分自身を反省して正しいと確信できたら、たとえ相手が千万人であっても自分は恐れずに立ち向かって行く」の意です。この言葉を自分なりに解釈し、いかなる時にも揺らがない軸を自分の中で持つことを大切にしています。

「人 自然 時を結ぶ」

昨年より真澄のブランドメッセージとして掲げている言葉『人 自然 時を結ぶ』。私たちの生業である酒を通じて叶えたい想いが込められています。

まず『人』について。酒離れと言われていますが、数千年前から存在していた「酒」が人々の暮らしから消滅することはないと信じています。人が集い食卓を囲み楽しい時間を過ごすために、酒はなくてはならない存在です。時代によって変わる食材や料理を意識しつつ、現代の食卓に寄り添う酒をつくっていきたいと思います。

次に『自然』ですが、酒は米と水という日本人にとって身近な原料でつくられています。良質で豊富な米や水が得られるのは豊かな自然環境あってのこと。自然の恵みを生かした酒造り、自然への負荷を最小限にした酒造りに取り組むことは、自然とともに生きる私たちの使命です。

最後に『時』ですが、私たちは過去から未来に続く線の一点に生きています。日本酒を過去から未来に繋いでいくためには革新が不可欠です。仲良くさせて頂いている小田原の老舗企業に社訓「老舗にあって、老舗にあらず」という言葉がありますが、老舗でいることに胡座をかいて変革を怠っていると未来はありません。

七号酵母を使った酒造りとは、この三点の要素を言い表しています。七号酵母が生み出す穏やかな酒質は食卓に寄り添い、「人」を結びます。米や水の味わいを損なわない酵母であるため、信州の豊かな「自然」の恵みを表現します。75年前に発見された七号酵母の可能性を追求し、過去から未来という真澄の「時」を結びます。七号酵母への原点回帰を掲げた2019年は私たち真澄にとって、自らの原点を知り未来への革新をリスタートさせる始まりの年であったと思っています。

軸を持ちつつ、変化を恐れないこと

私たちが忘れてはならないことは、自社は世の中に何らかの価値を提供できているかという一点です。社会は常に変化し続け、それに伴ってニーズも変わります。商品やサービスをガラッと変えることも出来ない私たちが提供できる価値の一つに「信念」や「哲学」のような情緒的価値があるのではないでしょうか。機能としての「美味しさ」は勿論ですが、それに加えてお客様の人生を豊かに彩るロマンを感じる酒でありたいと思います。

夢への第一歩

7万平米の遊休資産をリデザインする

諏訪湖を見渡す湖畔エリアには、かつて諏訪の工業を牽引してきた東洋バルブの工場跡地があります。7万平米もの広大な土地なんですが、僕が子供の頃には工場としての役目を終え、広大な空き地となっていました。この土地の有効活用を考え、諏訪地方の未来を創造する「諏訪未来デザイン会議」という組織が2020年に立ち上がり、有志10名ほどの中にメンバーの一人として加わって活動しています。酒造業とは一見何の関係性もないように見えますが、地域をよくすることはこの土地と結びついた仕事をしている私たちにとっての責務だと思っています。

Photo by 砺波周平

ー A story about coffee

人生に喜びと潤いをもたらす液体

酒、コーヒーのいずれも、暮らし、ひいては人生に喜びと潤いをもたらす液体です。ワインやビール、お茶など好きな飲み物は数多くありますが、もっとも身近で生活に密着しているのが日本酒とコーヒー。かつては毎日のように大量のコーヒーを飲んでいましたが、ここ最近はコロナの影響もあって飲む量は減り、品質に気を遣う様になりました。品質に対しての意識を高めることは、仕事にも良い影響を与えていると思います。

諏訪のコーヒー事情

諏訪市内のカフェ「AMBIRD」、隣の茅野市にある「Molino Coffee」の豆がお気に入りです。前者は都心から移住してきた同年代の男性が2019年にオープンさせた店。徒歩圏内でフラッと立ち寄れて美味しいコーヒーが飲める店がそれまではなかったので、この店が出来たことで暮らしの幅が広がったことを実感しています。週末の朝に妻とコーヒーを飲みに行き、店主と会話をするのが定番になりましたね。茅野市にある「Molino Coffee」は10年近く前にオープンし、美味しいコーヒーを求める地元の方、蓼科に向かう別荘族の方々から人気を集める焙煎所です。店主がセレクトした音楽と地元のアーティストによる作品が展示され、コーヒーに留まらない様々なお話を出来るのもポイントです。

こうした独立系の店舗の方々は、一杯のコーヒー、店舗に大切にしている想いや思想を反映させていて、そこに共感する人々が集うことでコミュニティが形成されていくことを実感します。コミュニティから独自のカルチャーが生まれ、エリアが魅力を持つようになっていく。一杯のコーヒーやお酒を提供する店舗、そこで働く人々が地域の未来を左右しているといってもいいかもしれません。

美味しいお酒とコーヒーのある街、諏訪にぜひお越しになってください。

宮坂 勝彦さん

1985年 長野県諏訪市にて育つ。大学卒業後、三越伊勢丹にて勤務。2012年 家業である宮坂醸造株式会社へ入社し、清酒製造の現場を学んだのち、米国英国における販売代理店 World Sake Importsにて研修。帰国後は商品、販売戦略、PRなどの企画を担当。

宮坂醸造株式会社

諏訪大社のご宝鏡を酒名に戴く真澄は寛文二年(1662)創業。清冽な水と冷涼な気候に恵まれた信州諏訪で酒を醸してきました。優良な清酒酵母として知られる七号酵母発祥の酒蔵として、その個性を活かした食中酒づくりを目指しています。

宮坂醸造ホームページ https://www.masumi.co.jp/

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